【2023年度版】令和5年の小規模事業者持続化補助金とは?

2023年3月3日、2023年度の『小規模事業者持続化補助金』の公募要領が公開され、全容がわかりました。
2022年度と同様に、通常枠とは別に枠が設定されています。

前年度(2022年度)は、適格請求書発行事業者に転換する免税事業者を対象とした「インボイス枠」がありましたが、2023年度は廃止されて「インボイス特例」という上乗せ制度が設定されています。

では、2023年度の小規模事業者持続化補助金について見ていきましょう。

なにをすればいいの?:補助対象事業

・対象となるための2つの要件

公募要領には以下のように示されています。

策定した「経営計画」に基づいて実施する、地道な販路開拓等のための取組であること。あるいは、販路開拓等の取組とあわせて行う業務効率化(生産性向上)のための取組であること。

小規模事業者持続化補助金<一般型>第 12 回公募 公募要領(第7版)

つまり要件は、

  1. 「経営計画」を策定すること
  2. 販路開拓等に取り組むこと

の2つになります。また、販路開拓等に取り組むことを条件に、業務効率化(生産性向上)のための取組についても補助対象となる、ということになります。

・前年度との違いは?

これら2つの要件は、前年度の「一般型」と同じです。前回(2023年2月13日締切分)申請して不採択だった方は再挑戦しやすいと思われます。

補助金額は?

補助金額(上限額)は、申請する枠によって異なります。また、枠を重複して申請することはできず、いずれか1つの枠で申請することになります。

申請枠通常枠賃金
引上げ枠
卒業枠後継者
支援枠
創業枠
補助額
(上限)
50万円200万円200万円200万円200万円
インボイス特例(要件あり)上記補助上限額に 50 万円を上乗せ
(公募要領(第7版)より抜粋)

補助率はすべての枠で2/3となりますが、『賃金引上げ枠』については、赤字の事業者に限り、補助率が3/4に引き上げられます。

補助額の異なる4つの『枠』とは?

2022年度に設定のあった「インボイス枠」はなくなりました。代わりに「インボイス特例」という上乗せ制度ができました。

4つの枠および「インボイス特例」のそれぞれの要件は以下の通りです。

《賃金引上げ枠》

補助事業実施期間に事業場内最低賃金を、地域別最低賃金より+30円以上とすること

  • 「補助事業実施期間」とは、各回で個別に定められますが、採択後の交付決定から概ね半年程度です。
  • 「事業場内最低賃金」とは、事業者のそれぞれの事業場(店舗等)における、パート・アルバイト等の正規雇用者を含む最低賃金です。
    「事業場内最低賃金」は、申請時点の直近1か月で支給した賃金をもとに計算しますので、賃金台帳の提出が必要となります。
  • 申請時点で従業員がいない場合は、もちろん対象外です。
  • 申請時点ですでに「地域別最低賃金より+30円以上」を達成している場合は、「事業場内最低賃金」を+30円以上にすることとなります。
  • 賃上げを実施しなかった場合は、補助金は受け取れません。
  • 直近1期または直近1年間の課税所得額がゼロであった赤字事業者に対しては、補助率が3/4に引き上げられます。また、「インボイス特例」の利用も可能です。審査時には、政策加点を受けることで、優先採択が実施されます。

《卒業枠》

補助事業実施期間中に、常時使用する従業員を雇用し、小規模事業者の定義から卒業する事業者

  • 「常時使用する従業員」については、雇用形態、賃金体系などを総合的に勘案して判断するため、正規雇用の従業員だけでなく、アルバイトやパート等の非正規労働者を含むこともあります。申請前に事務局に確認することをお勧めします。
  • 「小規模事業者の定義から卒業する」とは、下表のように小規模事業者として定義する従業員数を超えることです。
業種常時使用する従業員の数
商業・サービス業(宿泊業・娯楽業除く)6人以上
サービス業のうち宿泊業・娯楽業21人以上
製造業その他21人以上
(公募要領(第7版)より抜粋)
  • 直近1か月間における労働基準法に基づく労働者名簿(常時使用する従業員分のみ)の提出が必要となります。
  • 小規模事業者から卒業しなかった場合、補助金は受け取れません。

《後継者支援枠》

「アトツギ甲子園」のファイナリストになった事業者

  • 「アトツギ甲子園」とは、全国各地の中小企業の後継者・後継者候補(アトツギ)が、新規事業アイデアを競うピッチイベントです。
  • 対象事業者は限られると思われますが、ご興味ある方は、公式ホームページをご覧ください。https://atotsugi-koshien.go.jp/

《創業枠》

過去3か年の間に開業し
かつ
産業競争力強化法に基づく「認定市区町村」または「認定市区町村」と連携した「認定連携創業支援等事業者」が実施した「特定創業支援等事業」による支援を受けた事業者

  • 「特定創業支援等事業」による支援には、認定を受けた市区町村や、認定連携創業支援等事業者(商工会議所や商工会等の支援機関)が開催する創業スクールなどが該当します。
  • すべての市区町村が産業競争力強化法に基づく認定を受けているわけではないため、創業地域外で「特定創業支援等事業による支援」を受けた場合も対象となっています。
  • 代表者が「特定創業支援等事業による支援」を受ける必要があります。
  • 支援を受けたことを証明する修了証や証明書の写しの提出が必要となります。

《インボイス特例》(上乗せ特例)

免税事業者であった事業者のうち、インボイス(適格請求書)発行事業者の登録が確認できた事業者

  • 「免税事業者であった事業者」とは、2021 年 9 月 30 日から 2023 年 9 月 30 日の属する課税期間で一度でも免税事業者であった又は免税事業者であることが見込まれる事業者のことです。
  • 補助事業の終了時点で、インボイス(適格請求書)発行事業者として登録している必要があります。
  • 補助事業の終了時点で、インボイス(適格請求書)発行事業者の登録が確認できない場合、特例は適用されません(補助金額の上乗せなし)。
  • 2022年度に「インボイス枠」で採択を受けて補助事業を実施した(している)事業者は、本特例の申請対象外です。
  • 補助事業終了時の実績報告書の提出時に、インボイス(適格請求書)発行事業者の登録通知書の写しを提出します。

どんな費用が補助対象?

補助の対象となる経費は、11種類に限定されています。これらに該当しない経費は補助対象外です。

昨年度の「一般型」とほぼ同一の内容ですが、新しく「ウェブサイト関連費」が追加されています。制限はありますが、自社サイトの構築や改修でも対象となります。

一方で、昨年度は対象だった専門家謝金」「専門家旅費」「設備処分費」は対象外となりました。また、「低感染リスク型ビジネス枠」では対象だった感染防止対策費」も対象外となりました。

対象経費について、以下に列挙します。

  1. 機械装置等費
    補助事業の遂行に必要な機械装置等の購入に要する経費
    単なる取替え更新の機械装置等の購入は補助対象外
  2. 広報費
    パンフレット・ポスター・チラシ等を作成および広報媒体等を活用するために支払われる経費
    ※単なる会社のPRや営業活動に活用される広報費は補助対象外
    ※ウェブに関する広報については、「ウェブサイト関連費」で計上する
  3. ウェブサイト関連費
    販路開拓を行うためのウェブサイトや EC サイト等の構築、更新、改修をするために要する経費
    ※補助金交付申請額の1/4が上限
    ※ウェブサイト関連費のみの申請は不可
  4. 展示会等出展費
    新商品等を展示会等に出展または商談会に参加するために要する経費
  5. 旅費
    補助事業計画に基づく販路開拓(展示会等の会場との往復を含む。)等を行うための旅費
  6. 開発費
    新商品の試作品や包装パッケージの試作開発にともなう原材料、設計、デザイン、製造、改良、加工するために支払われる経費
  7. 資料購入費
    補助事業遂行に必要不可欠な図書等を購入するために支払われる経費
  8. 雑役務費
    「補助事業計画」に基づいた販路開拓を行うために必要な業務・事務を補助するために補助事業期間に臨時的に雇い入れた者のアルバイト代、派遣労働者の派遣料、交通費として支払われる経費
    ※実績報告時に作業日報や労働契約書等の提出が必要
  9. 借料
    補助事業遂行に直接必要な機器・設備等のリース料・レンタル料として支払われる経費
    ※事務所等に係る家賃は補助対象外
  10. 設備処分費
    販路開拓の取組を行うための作業スペースを拡大する等の目的で、当該事業者自身が所有する死蔵の設備機器等を廃棄・処分する、または借りていた設備機器等を返却する際に修理・原状回復するのに必要な経費
  11. 委託・外注費
    上記①から⑩に該当しない経費であって、補助事業遂行に必要な業務の一部を第三者に委託(委任)・外注するために支払われる経費(自ら実行することが困難な業務に限る。)

これらの経費に該当するものであっても、補助対象外となる経費があります。公募要領に対象外となる場合が記載されていますので、申請を検討する際にはよく確認しましょう。また、公募要領を読んでもよくわからない場合は、事務局へ確認するようにしましょう。

いつ申請できる?スケジュールは?:申請締切日

2023年度は、第12回、第13回の2回にわたり申請を受け付けます。各回の締切日は以下の通りです。申請時に提出する「事業支援計画書」についても、地域の商工会・商工会議所に発行を依頼する締切日についても定められていますので、併せて記載しておきます。

受付回事業支援計画書の受付締切応募申請手続き締切
第12回2023年5月25日(木)2023年6月1日(木)
第13回2023年8月31日(木)2023年9月7日(木)
(公募要領(第7版)より抜粋)

「事業支援計画書」の発行依頼をする際には、補助事業計画書が必要となるため、計画書の作成期限は事業支援計画書の受付締切日ということになります。早めの準備を心掛けましょう。

追加で募集が行われる可能性もあり、公募要領は必要に応じて改定されますので、申請時には最新の公募要領を地区ごとのホームページから確認してください。

情報はどこで確認すればいい?:公式ホームページ

所在地によって管轄が商工会地区と商工会議所地区に分かれます。それぞれ地区ごとにホームページが異なり、書式なども異なりますので、自社がどちちの地区に該当するかは、最寄りの商工会・商工会議所に確認をお願いします。

いかがだったでしょうか。
令和5年の小規模事業者持続化補助金は、前年から大きな変更はないとの印象です。

小規模事業者は地域経済・地域社会の要です。対象の事業者にはぜひ活用していただき、事業を成長させて地域へ貢献していただきたいと思います。

補助金実践塾では、自分で計画書を作成する事業者さまに役立つ情報を提供しています。

計画書作成を通して経営者として成長し、さらに事業が拡大することを応援しています。

最新情報をチェックしよう!